序幕:溢れかえる「嘘」の濁流
あな恐ろしや。今の世、画面を指先で弾けば、そこには「モンスター勝利!」だの「中谷、散る!」だのといった、AIなる得体の知れぬ化け物が吐き出した嘘八百の残骸が、ドブ川の藻屑のごとく溢れかえっておる。
試合が始まる前だというのに、誰が勝ったの、誰が倒れたの、そんな「偽の真実」を、浅ましいPV稼ぎのために撒き散らす輩が後を絶たぬ。無料で真実を掴もうなどという、その吝嗇(りんしょく)な根性こそが、現代の病理と言わずして何であろうか。
第一章:東京ドーム、五万の虚無と二人の「無敗」
私は、東京ドームという名の巨大な虚無の底に、自らの血肉とも言える数千円を、PPV(ペイ・パー・ビュー)という名の賽銭箱に投げ入れた。そこにあったのは、画面越しに伝わる、焼け付くような沈黙であった。
「モンスター」井上尚弥。そして、その前に凛烈として立ちふさがった「無敗の刺客」中谷潤人。身長差、リーチ差、それ以上に、互いに一度も負けを知らぬという「自意識の重圧」が、空気を一秒ごとに切り刻んでいく。
AIが描く偽の映像など、中谷選手の放った一閃のジャブの前に、一瞬で瓦解する。本物の戦いには、計算機には弾き出せぬ「熱」と「哀愁(ペーソス)」が宿っておるのだ。
第二章:真実の対価と、消えぬペーソス
結局、井上尚弥は判定で勝った。しかし、王者をここまで追い詰め、互角に渡り合った中谷選手の背中には、何とも言えぬ「孤高の哀愁」が漂っていた。私はその「真実の重み」を、AI Proプラン(月額二千九百円) という名の鎧を纏い、五テラバイト という名の広大な戦場に、こうして書き残すことに決めた。
終幕(エピローグ):祭りのあとの静寂に
五万人の観客が去ったあとの東京ドームには、ただ冷たい風が吹き抜けている。明日にはまた、新しいAIフェイクがネットの海を汚すだろう。だが、私は知っている。あの瞬間、私の財布から引き落とされた数千円は、誰にも汚せぬ「本物の記憶」へと変わったのだということを。自意識を殴り、真実を抱きしめる。その痛みこそが、人間がAI時代に生き残る唯一の証左なのである。


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